BIGIN AGAIN

臨床心理士です。日々のカウンセリングや日常で気づいたことを綴っています。

クレヨン療法

私がクレヨン療法を思い付いたのは、中学生や高校生のスクールカウンセラーをやっていたときでした。
相談者さんは言葉にならない思いをたくさん持っていて、内的世界をことばで表現しようとするならば、言葉によって取り上げられたもの以外に取り残された部分がたくさんあります。会話によって伝えられることには限界がある。それを感じてそれをそのまんまありのまま表現できる方法はないかと考え始めました。

子供のころの私は本当によく遊びました。お絵かきも砂遊びもごっこ遊びも大好きで海でもよく遊びました。そんな子供のころの私が指揮をとったのかもしれません。遊びながら感情も存分に表現できる感じを知っていました。だから遊びながら感情をワーッとか、ボソッとか表してもそこに表現されたエネルギーやささやかな感情まで誰かが丸ごと受け止めてくれたらうれしいだろうなと感じたのでしょう。

描画は私が子供のころ体験した遊びに比べたら小さなものなんですけどね。それが凝縮されたらこんな形もとれるのかなと考えました。自由な手の運動、紙の質感、クレヨンの手触り、視覚的な楽しみ、不安を鎮めるかのように繰り返されるパターン・・・・子供にとって絵を描くことは遊びであり、衝動です。

こどもは紙が与えられるとその大きさという制限を守りながら、自由に殴り書きします。プレイセラピーではリミットを守りながら、その中で表現して表現した相手にホールドされた感覚を持ちます。その感じを中学生から、成人まで持ち込めたら、人は自分の思いを訴えることをクレヨン一本で表出できるのではないかと思いました。

今、クレヨンでと書きましたが描く道具がクレヨンで何色入りというのが必要かわかるまでにいろいろなことを試しました。クレヨンの他にマジック、色鉛筆、クレヨンも固いものから柔らかいものまで。パステルも試しました。
マジックは相談者さんの結構お気に入りでした。セレクトされることが多かったです。マジックがどうして使われなくなったかというとにおいです。マジックで殴り書きをした後はマジックのにおいでカウンセリングルームがいっぱいになり、まあ大変!。これは続けるのは無理だなと思いました。
パステルは粉が出ることのほうが多くて表出が上手くできませんでした。色鉛筆など固い素材のものは心が自由になりにくいためでしょうか?たぶんそうだと思うのですが用意していても相談者さんが選ぶことはありませんでした。
クレヨンの色もできるだけ多い方が相談者さんにとっては自分の気持ちに合ったものを使えていいようです。ただ、一回の施行で使う量が半端でなく、使われる色はある程度決まっているので今は24色のオイルクレヨンとなっています。こんな風に使う用具は相談者さんとともに選んでいきました。自由にとらわれることなく、表出できることをめざして。

描く紙もあれやこれや試行錯誤して選びました。目を閉じて描いていただくので、相談者さんがはみ出す心配をしなくていいものとするとおおきめが必要と思い、カレンダーの裏側を使ったこともありました。
小さな相談室ではA4の紙を使ってみることもありましたが、相談者さんがのびのびと描くことができませんでした。それで新聞紙に描くというところに行きついたわけです。
なぜ殴り書きで始まり、殴り書きで終わり、顔や木などの形にしなかったのかそれにも意味がありました。


絵を描くときに人は大人になればなるほど「上手、下手」にこだわってしまいます。どうしたら、人が上手下手にこだわらず、クレヨンで自分の感情を表出できるかも考えなくてはいけないところでした。そして、同時に悲しみや苦しさ、怒り、恐怖に伴って、身体に起きている不快な感覚に集中できるか...目を閉じて描いてもらえばいいのだと思いました。みなさんの描く絵はこんな絵が多いですよと殴り書きをしめし、目を閉じて描いてもらう。ほとんどの人が形を描かなくていいんだ、殴り書きでいいんだと思います。
そして、目を閉じて描くからはみ出す心配をしないように新聞紙ぐらいの大きさの紙が必要で、発散するため描くときは何枚も必要で、描く紙は新聞紙になりました。相談者さんが描いている間治療者が新聞紙の両側を押さえている形が相談者さんの吐き出したもの全部受け止める形になり、ホールドする形になるわけです。


実際相談者さんは描いている間「過去にこんな辛いことがあってね、すごく悲しくてね・・・それが長く続いて自分はもうだめかと思ったんだ」みたいなおしゃべりをカウンセラーにずっとしている気持ちになる人もいます。

こんな過程を経て今描く道具は24色のクレヨン、新聞紙になりました。


そしてなにか不快を感じる身体の部位に手を当てて、目を閉じて描く形になりました。

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1.方法

目を閉じて、もやもや、胸の痛み、悲しみ、怒りを感じる身体の部位に片手を当てます。多くは胸、頭、喉、腹です。時に目、背中などあります。そしてクレヨンを反対の手にもってなぐり書きをしてもらいます。このとき治療者は、相談者の一本の線で表現する様子に一本の線の動きにどれだけ傷つきがあるか、悲しみ、怒りがあるか共感できるところが勝負どころとなります。それは、相談者に波長合わせした治療者に時にかすかな胸の痛み、のどや胃のひりひりした感じなど伝わってきて治療の手掛かりになることがあります。

相談者は新聞紙の上にクレヨンで自由に殴り書きするだけです。相談者に言わせると、殴り書きの動きにのせて言葉にならない感情をあったことを治療者に話しているような、吐き出しているような気持になるそうです。
かなりenergyのいるワークなので時間には気を付けています。
ひとつのワーク20分から、30分ぐらいです。回を重ねるにつれ、より相談者の深い傷つきが表現されてくるので殴り書き5分ぐらいでも相談者は疲れるのでストップが必要です。
描かれたものに適宜カウンセラー側が介入していきます。ほかの色のクレヨンをお薬といって塗る、水と見立てた色できれいに流す、描いたものを破るなど、相談者がほっとすること、気持ちのすっきりすること、を行います。思い込みを修正するなど積極的に言語で介入することもあります。
最初の苦しみ辛さなどを数字で表してもらい(例えば100とか)、ほとんど0になるところを目指します。

描く場所はこんな感じです。
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2.治療の対象となるもの

いじめ(無視。悪口、暴言、ときに暴力など)
ハラスメント(今までは、パワハラ被害のPTSDが多かったです。ブラック企業PTSDなども)
大切な人やペットを失った傷つき、悲しみ
交通事故のPTSD
家族との関係における傷つき
新しい仕事へのパニック、不安
苦手な人への感じ方
睡眠障害
リストカット
職場のストレス
漠然とした不安、恐怖などです。

発達障害の方は、絵を描くのが困難なことがよく見られるので無理強いはしません。注意して試みています。
実際は中学生以上にしか試行したことはありませんが、もしかして対象は小学校高学年からできるのではないかと思っています。

3、治療期間

(これまで治療を終了したものを目安として)
半年のいじめ   30分一回のワーク
3年間のいじめ  30分5回
1年半のハラスメントの後遺症  40分3回のワーク
大切な人を災害で失った悲しみ  30分一回
睡眠障害   個人差があります 30分一回から5回ぐらいまで

主訴としたものを終えた後潜在していたトラウマが出現してくることはよくあることで、社会適応を順調にしていくにはより回数が必要になることがあります。

家族との関係における刷り込みのような傷つきは、一番身近で長期間にわたって関わっているため、カウンセリング期間は長引く傾向があります

4.特徴

特徴のひとつは非常に短期間でカウンセリングが終了することが多いこと
もうひとつは、こういうことが具体的にあったなど内容がが明らかでなくても「なんか息苦しい」とか「頭がもやもやする」「頭が重い」とかでもカウンセリングの対象となるものがあります。


描かれたものはこんな感じになります。

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<参考>
ブリーフサイコセラピー学会発表 第19回日本ブリーフサイコセラピー学会,東京,2009.8
心理臨床学会発表 日本心理臨床学会大会,東京,2008




クレヨン療法を受けられた方の体験談を紹介いたします。

相談者体験談①
仕事がなかなか決まらず、過去に長期にわたるいじめを受け、自分なんか社会に必要されていないととても自暴自棄なところがありました。それは、心にも身体にも影響が出ていました。 
こちらでのカウンセリングを受けるようになり、自分のことが少し大事に思えるようになり、前向きになれました。そして仕事に就くことができました。 
しかし、そこの職場は労働環境がだんだん悪くなってきました。人手不足による過重労働です。また、だんだん眠れなくもなり、職場に行くのに吐き気などしてだんだん無理になってきて、以前ほどではなかったですが、自分をだめだと思い、睡眠もきちんととれなくなってきました。 
カウンセリングでお話ししたり、主に絵画療法をすることにより、心身のストレスが毎回とれ、体内のモヤモヤが晴れ、すっきりとした気分で次に進めるようになりました。過去のいじめのトラウマも随分解消され、以前ほど自分を嫌いではなくなりました。 
今、前職を辞める判断もでき、次の新しい仕事にのぞんでいます。以前は自分を全く好きでなかったのですが、少しずつ昔のように好きになれてきてうれしいです。

この方は私のカウンセリングを2か月9回受けられました。

相談者体験談②
過去の経験から心が塞ぎがちになってしまったり、夜眠れなくなったり体調が悪くなってしまう事も多くありました。人と関わること
が難しいことがたびたびありました。

しかし、こちらのカウンセリングに通い始めて精神的にも安定してきて、体調も良くなってきました。人との関わりはまだまだです
が、悩むたびに相談にのってもらって乗り越えています。

 

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